2012年3月4日日曜日

記憶

実りの季節がくればその髪は陽の光になる。
乾いた草のにおいが鼻孔をくすぐる。
風は強く、踏みしめる土はほんのり熱をもっている。

私はその熱を追いかけている。
陸のただなかで潮騒を聞く。
身体はゆっくり冷めてゆき、夜がくる。
町の灯りは遠く、星の灯りは近く。
宇宙の寒々としたなかで、身体はどこか軽やか。
声はもう聞こえない。
でも、幼いころ聞いた歌は微かに大気を揺らして。

目を閉じれば曖昧な白。
たゆたううちに溶けてしまって輪郭も思い出さずにいる。
土星のわっかとか木星の雲を掬いとって、混じりあってゆく。
戻れないことは知ってるから星は死んでくだけだった。

双子葉ほどうまく呼吸できないからえらを探している。
言葉はまだできてないらしくただ、彼と手を繋いでる。
できそこないな宇宙に閉じこもってリンゴが降ってくるのを待つ。
空は揺れていて、古い歌を運んでる。

気づけば教室の窓は開いてて、カーテンがささやかに膨らんでいる。
窓辺に見ていた子の名前はしらないまま。
幅跳びのマットは夕陽のなかにあって、風を撃つように跳ぶ。
羽持つ動物たちはどこに行くのかな。

スカートの端には昨日がくっついてる。
最後にしゃべった声の高さ。
大気のなかの、歌の痕跡。


tweeted 3/4 1:42-2:36

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